「単結晶構造解析」の紹介
装置の名称: 単結晶X線構造解析装置 D8 QUEST
_diffrn_measurement_device_type 'Bruker D8 goniometer'
_diffrn_radiation_monochromator 'multilayered confocal mirror'
本装置の基本
単結晶を用いて、物質の構造を明らかにします(詳しくは後述)。
単結晶を作ったら、「結晶の選別」→「マウント」→「測定」→「解析」→「CIF作成」を行います。
最適な結晶サイズ
何を測定するかによっても変わりますが、本装置の最適サイズは0.1 mm × 0.1 mm × 0.1 mmです。
それより大きくても、小さくても問題ありませんが、大きすぎると結晶の質が悪くなることも多くなります。
小さめで、エッジがシャープな結晶作りを目指してください。また容器から取り出しやすいことも大事です。
なお、0.05 mm角の結晶でも質が良ければ1秒測定、20分で終了しました(重元素有)。
本装置からわかること
単結晶構造解析は、XRDを一次元とすると、3次元で物質の構造を明らかにすることができます。
つまり、物質の立体的な全体構造に加え、結合距離、結合角、ねじれ角、分子間距離、ディスクリートな分子の空間配置、絶対構造を知ることができます。それらの情報を使えば、分子内の電子の局在化や反応性の議論、分子間相互作用など他の手法では説明しにくい現象を説明することができます。
物質の構造を知る手法としては、他に代わりの無い極めて優れた手法であり、本装置の発展が現在の複雑な化学分野の発展を支えたと言っても過言ではありません。
一方で、二点注意しなければならないことがあります。
(1)あくまでも測定温度における固体構造であること
結晶構造解析で得る構造は、固体、つまりびっしりと周囲に物質が集まった中での構造になります。そのため、溶媒に囲まれ、自由度もある溶液中での構造とは区別する必要があります。多くの場合、物質の基本的な構造は溶液と固体で近い場合が多いのですが、環境が異なることを意識し、あくまでも固体中の平均構造として扱ってください。また基本的に低温で測定しますので、その点も注意が必要です。
→ 溶液構造との議論がしたい場合はNMRなどの溶液構造を示す手法と関連づけることが大切です。
(2)あくまでも自分がマウントした結晶の構造であること
結晶構造解析で得る構造は、たまたま自分が選んだ結晶の構造であり、同じ実験から得られた全ての結晶が同じ構造をしているとは限りません。例えば、顕微鏡で覗いて、一番きれいな結晶を選ぶわけですが、隣にあったいまいちな結晶は実は違う物質であったり、違う構造(多形や擬多形)である可能性があります。
→ 全体が同じ構造であることを決定づけるためには、結晶をまぜた粉体でのXRDや元素分析、融点測定など別の手法を組み合わせることが大切です。
共同研究の考え方
この装置は共同利用設備ですので、本研究室関係者が講習で対応しても共同研究ではありません。
講習(装置の概要、測定手順、一般的な解析)は教育の範囲内で先端研学生職員が対応します。対称性を含む空間群や絶対構造の決定、ディスオーダー処理や各種拘束コマンドの設定などは学生職員の指導範囲ではなく、研究室に持ち帰って各自で解析してください。
依頼測定や共同研究は別途、堀までご連絡ください。