
フッ素が効率良く分子を認識し、金属イオンが分子の捕捉を色で教えてくれる新しい固体材料の開発から、環境保全及び低炭素社会の実現に貢献するとともに、ものづくりを担う化学のつくる責任つかう責任(SDGs12)を基礎から支えます。
「パイホール(π-hole)と非多孔性適応結晶(NACs)」
液晶, 解説, 2024, 28, 137-146; 色材協会誌, 解説, 2019, 92, 274-278.

フッ素は電気陰性度が大きく周囲の電子を引っ張ります。これによりフッ素を導入した芳香族(パイ)分子の環中心は電子欠乏(パイホール)になり、金属錯体であれば金属イオンの求電子性が向上します。このような化合物の分子性結晶は電子豊富な分子を惹きつける非多孔性適応結晶として振る舞います。パイホール分子の合成と分子認識は当研究室が国内外で先駆けて展開している独創的な研究です!
「動的結晶場の作成とゲスト包接」
CrystEngComm, 2024, 26, 3014-3020; Chem. Eur. J., 2020, 26, 5051-5060; CrystEngComm, 2014, 16, 8805-8817; CrystEngComm, 2007, 9, 215-217.


フッ素置換した金属錯体が様々な分子を包接することを明らかにしました。分子の認識は可逆的かつ選択性が見られ、環境規制物質や構造が似た分子の分離が期待できます。フッ素置換銅錯体がベンゼンを吸い込むと茶色から美しい青色の結晶へと変化しました。
「フッ素置換化合物のガス吸着」
RSC Advances, 2025, 15, 6184-6190; Dalton Trans., 2019, 48, 9062-9066; CrystEngComm, 2017, 19, 6263-6266.


フッ素置換した金属錯体や環状分子が、NACsとして小分子ガスを吸着することを明らかにしました。特に二酸化炭素や窒素などの無極性のガス分子が特異的に結晶内に取り込む興味深い現象が見られ、今後のガス分離や貯蔵への応用が期待されます。
「窒素を導入したピラジナセンの合成と分子認識」
Chem. Eur. J., 2025, 31, e202403422.

窒素を導入した化合物もパイホールを形成し、NACsとして小分子を認識することを見出しました。分子内電荷移動を巧みに設計することで、分子を認識した際に分子間電荷移動と競合して色が変化する新しい分子センサーを開発します。これらの成果はリチャーズ博士との共同研究です。
「擬多形結晶の動的構造変化」
Cryst Growth Des., 2014, 14, 3169-3173.

フッ素を置換したパラジウム錯体は3分子のメシチレンを取り込んだ針状結晶を与えます。これに振動を与えると2分子のメシチレンをもつ粒状結晶に一義的に変化しました。学生さんが実験中に見つけたユニークな現象です。この結晶からそれぞれメシチレンを取り出した後、もう一度メシチレンを加えると、元の数と同じ量が入るメモリー効果も観測されました。
「金属錯体の交差集合」
Angew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, 7617-7620.

フッ素を置換した金属錯体(図中赤色)と置換していない金属錯体(図中緑色)を溶かして混ぜると、瞬時に針状結晶が生成します。とても細い結晶ですが、学生さんの100回以上に及ぶ再結晶化から、錯体同士が交互に並んでいる構造であることが明らかになりました。中心の金属イオンを変えても交互に並びます。錯体平面がちょうど1ナノメートル四方、アレーン・フルオロアレーン相互作用による異種金属イオン集積の最初の報告例になります。
「分子性結晶の構造決定」
無機:CrystEngComm, 2020, 22, 3090-3094; Polyhedron, 2020, 192, 114825.
有機:Crystals, 2024, 14, 1032; Acta Cryst., 2019, C75, 265-270; Crystals, 2019, 9, 175.

分子性結晶のダイナミックな構造変化や吸着現象、物理的性質に着目し、ディスクリートな芳香属性化合物の結晶化と機能化を行なっています。結晶構造と分子間相互作用をDFT計算等と関連づけ理解することを目指します。正確な構造議論に向けて研究室の学生全員が単結晶の作成に取り組んでいます。